〜はたけのやさい〜

(乳幼児発達研究所「手づくり絵本」より)



出会いを育てる

 毎年保育所の子どもたちみんなで取り組んでいる野菜づくり。土とりからはじまって,畑づくり,苗うえ(種まき),水やり,草ぬきと世話をする中で子どもたちは,いのちと出会い,いのちを育てている。日々,子どもたちは野菜の世話をする中でいろんな発見をし,ことばで表現する。その発見をみんなのものにしたい。また,単に教え込みではなく,楽しみの中でそれぞれの野菜の育ちと出会っていきたい。そのような思いが私の中にふくらんでいた。ちょうどそのころ,私はクラスの子どもたちと手づくり絵本を楽しんでいた時期であった。クラスだけではなく,保育所全体で楽しめる絵本もつくりたいと思っていたので保育所の野菜を題材にした絵本づくりに取り組んだ。


なぞなぞ大好き+子どもの発見

 「トマトのはなっておほしさまみたいやな」「キュウリのはっぱにとげとげがある」「ナスビのはなはしぼんだらみんな実になるのに,キュウリはおかあさんのはなだけ実になるんやな」「ラッカセイ,いくらはながさいても実ができひん。あっ,つちのなかにもぐってるで!」...私は,そのことばを絵本の中に活かしてみたいと思った。また日頃,なぞなぞ遊びを絵本に取り入れてみた。

 「とげとげはっぱにきいろいはな。おとうさんのはな,おかあさんのはながあるね。なにができるのかな。」
 (頁をめくると)
「みどりいろしたきゅうりだね。」
と答が出てくるしくみである。このような繰り返しの中で畑の野菜を次々登場させ,最後は「みんなでいただきます。」としめくくった。一所懸命育てた野菜をみんなで食べる楽しさを共有したい思いも伝えたかったのである。

 毎日本物と出会っている子どもの思いがこわれないようにと,絵を担当した仲間は,写生をしたり,色使いを工夫したりした。

 その時は描くことしか考えなかったが,後に異動した保育所では,畑の野菜をカメラで接写し,写真絵本やスライドにしてお話を楽しんだ。同じ題材でも,表現方法をいろいろ変えてみるとまた違った楽しみ方ができるものである。


絵本から生活へ

 できあがった絵本をまず,自分のクラス(3歳未満児)で読んでみた。自分たちが育てている野菜に関しては,すぐに「きゅうり」「なすび」と答が出てくるが,他クラスが育てている野菜に関してはなかなか答が出てこない。そこで子どもたちと,絵本のなぞなぞをヒントに畑に行ってみた。「あった,あった」と子どもたち。ふだん何気なく見ていた野菜と改めて出会うことができた。全クラスで読み合った時は各クラスの子どもたちが自分たちが育てている野菜が登場すると得意気に答を出していた。その後,各クラスにまわしながら,なぞかけ絵本『はたけのやさい』を楽しんだ。その繰り返しの中で,子どもたちは自分たちが育てている野菜,それらの育ち方の違いなどを,確かめ合っていた。また,畑の野菜への思いもよりふくらんでいったのである。

 生活の中で子どもたちはいろんな不思議さに出会っている。鋭い目でいろんな発見をしている。それらをしっかり受けとめ,子どもたちにかえしていくことの大切さを,この絵本づくりを通して私は子どもたちから学ぶことができた。



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