〜おりがみであそぼ〜

(乳幼児発達研究所「手づくり絵本」より)



折り紙ってたのしいな

 ふだん自分で折るより,折り紙を持ってきては「○○おって」と保育者や大きい子に折ってもらうことの多い3歳児の子どもたちが,秋一番に出会ったバッタを自分で折り紙を使って表現した。

 年長児が見つけたバッタを借りて,ひとしきりバッタで遊んだ日のことである。「バッタをさがしにいこう」ということになり,みんなで保育所の裏庭に出かけた。草むらを探すと小さなバッタがあちこちで散歩していた。「いた,いた!」と子どもたち。バッタを追いかけて遊んだ後も,バッタの話で盛り上がった。そこで私は,子どもたちにバッタづくりを提案してみた。

 保母「バッタつくってみようか。」
 Y男「なにでつくるの?」
 保母「なにでつくろう?」
 T男「おりがみでつくったら?」

 そのような会話が発端で,バッタ遊びは折り紙遊びへと,発展していった。

 「さんかくおやまに はねふたつ
  おめめをかいたら できあがり」

 この最も簡単な折り紙バッタは,子どもたちに自分で折る満足感を与えてくれた。折り紙の色は自分たちで選んだ。「きみどりいろしてたな。」「つちいろのも,つくろ。」子どもたちは,次々に折り紙を取り出し,いっぱいバッタをつくっていた。そこに,自分で折る楽しさを知りはじめた子どもたちの姿があった。

 その後,子どもたちは散歩に出かけてバッタに続く<秋>をいっぱい見つけた。その中のひとつである栗を折り紙で折ってみた。まず保育者が順を追って折ってみた。すると,1枚の折り紙がいろんな形に変わっていく不思議さ,おもしろさがことばとなって子どもの口から飛び出してきた。その時ひらめいたのがこの絵本である。折ってもらう喜びとともに自分で折る楽しさ−1枚の紙でいろんな形を生み出す楽しさ−をどんどん味わってほしい,折り紙遊びに子どもたちのくらしやことばを重ねてみたい,そんな思いで絵本『おりがみであそぼ1−なにができるかな−』をつくってみた。


実物大の折り紙絵本

 市販されている折り紙絵本とはひと味違うものをつくりたいと思い,折る過程ごとにページを変え,実物の折り紙を貼っていった。見開きの左のページには,折り方と,保育者が折るたびに発した子どもの声を文字の太さを変えて載せた。これは,今までつくった中で最も短時間で仕上がった絵本である。手軽につくれて,繰り返し誰でも使いきれるものとして,シリーズを重ねていきたいと思っている。


絵本を見ながら折り紙遊び...

 折り紙遊びで栗を折った翌日にこの絵本を子どもたちに見せた。子どもたちのことばを読むとドキッとした表情を見せ,ページがすすむごとに「くり,おったな」「きのう,つくったな」と自分たちの活動を思い起こし,ことばを交わし合っていた。

 読んだ後,本棚に置いておくと,ひとりで見たり,何人かで見たり...。折り紙を持ち出し,絵本を見ながら折っている姿に出会うこともあった。子どもたちがくらしの中で出会っていくものたち,それらが折り紙遊びに広がるごとに,この絵本の数もふえていくだろう。この子どもたちが年長になるころには,自分で工夫し,考え出した「創作折り紙絵本」を子どもたち自身がつくったらステキだな,と胸をふくらませている。



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