〜たなばた〜

(乳幼児発達研究所「手づくり絵本」より)



行事を捉えかえす

 くらしの中には,さまざまな行事がある。保育所生活の中においてもそうである。子どもにとって「行事」とは何だろう。行事を生活の中での節目と捉えるなら,新しいくらしにつないでいくため,私たちは行事を通して子どもたちに何を伝え,子どもたちと何を共有していったらいいのか。そのように考える時,それまで当たり前のように行っていた保育所行事ひとつひとつにこだわりをもたずにいられなかった。5年前,私は当時いた保育所で仲間と共に行事を見直す作業を行った。

 毎年7月7日が来るたびに,笹飾りをし,星祭りの話をし,子どもたちの願いを短冊に書いて七夕さまに託していた「たなばたまつり」だったが,その年は,「七夕って何だろう」「保育所生活の中で七夕を行事に取り入れることの意味」を捉え返すことからはじまった。さまざまな国,地方で古くから伝えられ,行われてきた「七夕」の起源を探り,それとともに保育所のたなばたまつりを子どもたちと新たにつくっていこうとする思いの中で生まれたのが,絵本『たなばた』である。(主な参考資料『まつりと子ども』『7がつどんなつき』芳賀日出男,『神と祭りと日本人』牧田茂。)


絵本を通して行事と出会い,行事を楽しむ

 おおぜいの子どもでも見られるようにと,大型絵本(見開き 四つ切り画用紙)にした。絵は,描くだけでなく,はり絵を用いて立体感が出るよう工夫した。絵本を見る中で子どもたちはいろいろな七夕行事があることを知り,保育所独自でたなばたまつりを楽しむことを見つけることができた。これは,私たちにも言えることである。絵本づくりを通して,笹にまつわる思いを知ることができ,その後の生活の中で竹遊びも広がった。笹飾りを川に流すことのできない現在の生活の中での工夫も生まれた。また,絵本の中で「7がつ7かのよる,そらをみあげて...」と書いたものの,実際はこの時期,おりひめ星やひこ星がその位置には見えないという事実を後日指摘され,空を見上げて気づいた。旧暦と新暦,伝えることの難しさも学ぶことができた。


ひとつの作品を多様に楽しむ

 一昨年,異動先の保育所でこの絵本を立体大型紙芝居風につくりかえてみた。最後のページの保育所独自のたなばたまつりの内容は子どもたちの思いをふくらませつつ,新たにつくり合った。少しの工夫でずいぶん趣が変わるものである。読んだ後は,絵と文をつないでホールの壁面にはりだし,ひとしきり楽しんだ。その時々につくりかえたり,楽しみ方を工夫できるのも,手づくり絵本ならではのことだろう。多様に活かしきりたいものである。



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