〜ふしぎ,ふしぎ,だいはっけん〜

(森上史朗・吉村真理子監修「ぞう組さんあつまれ」(ミネルヴァ書房,1996)から



 春,3歳には少し満たない(5〜6月で3歳になる)かわいい子どもたちが7人,幼児保育所にやってきました。毎日,子どもたちの口から飛び出すことばは,「あそぼ」「なあに」「なんで」。そこで私も子どもたちのことばとつきあってみることにしました。

 最初に出会ったのは,『なんで,牛には角があって馬にはないの?』これは,しんちゃんの馬のマークをめぐって展開された『馬・牛論争』のなかで発した子どもの声です。私がふとっちょの馬を描いたばかりに起こった論争なのですが,その時,かあ君が「角がないからこれは馬や」ととどめをさしたのです。そこからこの疑問が生まれてきました。私も即答できず,思わず「なんでやろ?」といっしょに考えこんでしまいました。秋には遠足で動物園に行きます。答はほんものに出会ってからのお楽しみになりました。

 動物園行きが実現したのは11月はじめ。子どもたちも私もわくわくして出かけました。動物園のなかにある『おとぎのくに』には,子牛やポニーがいます。子どもたちは,体や角に触れました。足やひづめも見ました。そして,動物園のおじさんは子どもたちにとてもわかりやすく話をしてくださったのです。

 意気揚々と帰ってきた私たちは,さっそく4月の話し合いの続きをしました。
私「牛の角はなんのためにあるのかな?」
子ども「あんな,悪者が来たら角でやっつけるんや」
私「そうか。そしたら馬は角がないやろ。悪者が来たらどうしよう?」
子ども「足でポーンとけとばしたらええやんか」
私「うん,けとばす力すごいもんね。馬と牛,ヨーイドンしたらどっちが速いと思う?」
子ども「そら,馬に決まってる」
私「そしたら,悪者来たら逃げることもできるな」
子ども「うん,できる」
私「牛の口,さわった子いる?」
子ども「さわったで。フニャフニャやった」「馬やったら,ガブッてかめるのにな」
私「足も違ってたね。覚えてる? 馬のひづめ,どうやった?」
子ども「1つやった」
私「牛は?」
子ども「2つ」
私「ひづめが少ない方が速く走れるのかな」
子ども「馬の方が速いもん」
そこで,ひづめの型をまねて指あそびをしました。すると,しんちゃんが自分の手を開いてみせ,
「ほな,これはなあに?」とたずねました。
「なんやろ?」
「人や」



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