〜仲間づくりの第1歩〜

(森上史朗・吉村真理子監修「ぞう組さんあつまれ」(ミネルヴァ書房,1996)から



 保育所生活最後の1年を20人の子どもたちといっしょに歩きだして,1カ月たったころのことです。4月は,大好きな友だちといっぱい遊んだので,5月は,いろんな友だちと仲良しになろうと,子どもたちと相談して,5人グループをつくることになりました。

 新しいグループでのはじめての話し合いは,グループの名前を決めること。4つのグループが決まり終わるまでには,たっぷりと時間がかかりました。子ども同士で考え合うきっかけにしてほしいと思ったからです。私はことば遊びが大好きになった子どもたちに,クラスの名前の<ほしぐみ>にちなんで,「4文字になることばを探して決めよう」と,1つだけ提案しました。

 どの子も指を折りながら考え始めました。まず,すんなり決まったのが,『ひこうきグループ』。少しもめながらも,いつのまにか決まった『たんぽぽグループ』。なかなか決まらず,ジャンケンをしたけれど,やっぱり納得できなくて話し合いが中断しそうになったグループには,ひこうきグループの友だちが心配して話し合いの輪に入っていきました。そして最後は全員納得して『おさかなグループ』におさまったのです。それは,おとなしい女の子が最後までゆずらないという強さ,やんちゃな男の子が「いいよ」と言ってやさしさを見せてくれたひとこまでした。

 一番最後に決まったのが『ひまわりグループ』です。このグループは会話がはずんでいたので,早く決まるかなと思っていました。ところが,決まりかけた『ひまわり』を「どうしてもいやだ」とじゅん君が言いだしたのです。「そんなにいやなら...」と他の子は,いろんな名前を提案しました。1人の子の「いや」という思いを大切にしようとしたのです。自分のなかで葛藤していたのでしょう,ずいぶん時間がたってから「ぼく『ひまわり』でもいいよ」と,じゅん君が言いました。一所懸命考えて,名前をいっぱいあげていたあっ君は,思わずつぶやきました。
「ほな,最初からそう言うてくれたらいいのに...」

 その後グループで給食を食べているときに,じゅん君が,はずかしそうに話しだしました。
「ぼくのな,前にいた保育園,『ひまわり保育園』って言うんや」。
「そうか,そうだったのか」と,思わずうなずきました。
「へえ!」と子どもたちはびっくり。じゅん君は,半年前に転園してきたのです。そのひとことを聞かなかったら,私やグループの子どもたちは,あのときのじゅん君の思いに近寄れなかったでしょう。

 「名前,変えようか」「いいよ。ひまわりって名前はきらいじゃないし...」子どもたちの会話が聞こえてきます。

 私にとっては,援助のむずかしさと,かかわりを深めることの大切さ,子どもたちのやさしさを学んだグループでの話し合いでした。  



 洋のホームページにもどる

inserted by FC2 system